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学院長室。四人のメイジと一人の使い魔は、オールド・オスマンに事の次第を 報告していた。全てを聞き終えたオスマンは、ステレオタイプな仙人ヒゲを いじりながら口を開く。 「ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな・・・全く騙されたわい」 一体どこで採用されたのですか、という隣に立つ教師の問いで彼が秘書を 適当に採用していたことが分かり、オスマンは全身に彼女達の非難の視線を 浴びるハメになった。 「ま、まぁ問題はそこではない 重要なのは今君達が成し遂げたことじゃ」 老齢の学院長は無理やりに話を戻し、コホンと一つ咳払いをして続ける。 「よくぞ土くれのフーケを捕まえ、我が学院の至宝を取り戻した!」 誇っていいのかよく分からない顔で二人、いつも通りの無表情で一人、そして これ以上なく誇らしげな顔で一人がオールド・オスマンに一礼した。 「フーケは城の衛士に引渡し、『破壊の杖』は無事この宝物庫に収まった これで一件落着と言うわけじゃ・・・そこで!」 オスマンは生徒一人一人の頭を撫でながら続ける。 「君達の『シュヴァリエ』の爵位申請を、宮廷に出しておいた また追って沙汰が あるじゃろう ミス・タバサは既に『シュヴァリエ』の爵位を持っているからの 彼女には精霊勲章の授与を申請しておいた」 「本当ですか!?」 四人の生徒達は一様に喜んでいる。 「勿論じゃよ 君達はそのぐらいのことをしたのじゃから」 しかしルイズは、ハッと気付いてギアッチョを見た。 「・・・あの 彼には・・・ギアッチョには何もないんですか?」 松葉杖をついたルイズの質問に、 「残念ながら・・・彼は貴族ではない」 オスマンは申し訳なさそうな顔で答える。 「そんな・・・オールド・オスマン 彼は一番の手柄を立てましたわ!」 「彼女の言う通りです ギアッチョがいなければ今頃僕らはどうなっていたことか!」 「・・・大戦果」 キュルケ達が一斉にフォローに入るが、 「すまんの・・・そうしたいのはやまやまなのだが、ここはトリステインなのじゃ 平民が貴族になることは――出来ない」 聞き分けてくれ、とオールド・オスマンは言う。ギアッチョはそんな彼女達の 抗弁を意外そうに見ていたが、やがて口を開いた。 「別に褒美が欲しくてやったわけじゃあねー その辺にしとけ」 本人のその言葉にルイズ達は不本意ながらも口を閉ざし、それを機会に 偉大な老師は話題を変える。 「さて、今宵は『フリッグの舞踏会』じゃ 『破壊の杖』も無事戻ってきたので 予定通り執り行うぞ」 四人は釈然としない気持ちだったが、本人がいいと言っているならしょうが ない。キュルケ達は無理やり気持ちを切り替えることにした。 「そう言えばそうでしたわね・・・フーケの騒ぎで忘れておりましたわ」 「今日の主役は君達じゃ 用意をしてきたまえ しっかり着飾るのじゃぞ」 いつもの好々爺に戻ってそう言うオスマンに礼をして、四人はドアに向かった。 ルイズはその場を動かないギアッチョに眼を向けたが、「先に行ってろ」と 言うギアッチョに心配そうに頷くと、慣れない松葉杖に苦戦しながら出て行った。 「何か・・・ワシに聞きたいことがあるようじゃの」 そう言うと、オールド・オスマンはギアッチョに向き直った。ギアッチョは黙して 老翁を見つめている。オスマンはそれを肯定と受け取った。 「言ってごらん できるだけ力になろう 彼女達を助け、フーケを捕らえて くれたせめてもの礼じゃ」 それからオスマンは、隣に控える雑草一本ない頭頂部を持つ教師――コル ベールに退室を促した。一体何が始まるのかと期待していたコルベールは 今正にかぶりつこうとしていたケーキを取り上げられた子供のような顔で 部屋を出て行った。それを見届けてからギアッチョは口を開く。 「『破壊の杖』・・・あれをどこで手に入れた?」 キュルケが抱えていたあれは、間違いなく自分の世界の兵器、ロケット ランチャーだった。何故あれがこっちの世界にある?自分の故郷、 イタリアに戻る方法は存在するのか?・・・ 全てを聞き終えたオスマンは、少し驚いた顔をしながらもこの兵器の由来を 語りだした。曰く、この杖は自分の命の恩人が持っていたもので、その男は 既に死んでこの世にいない。そして彼が何故、どうやってこの世界に来た のかはこのオスマンにもさっぱり分からないということだった。 「・・・・・・そうか」 ギアッチョは黙ってそれを聞いていたが、やがて諦めたようにそう言った。 何せルイズが連日徹夜で調べてくれても見つからなかったのだ。そう簡単に 分かるとは、ギアッチョも思ってはいなかった。オスマンはすまんの、と 一言謝罪を述べてから、 「しかしおぬしのこのルーン・・・これについては分かるぞ」 ギアッチョの左手を取ってそう言った。 アルヴィーズの食堂、その二階のホールが今夜の舞踏会場だった。中は 色とりどりに着飾った貴族達で溢れ、平民なら頼まれても入りたくないような 豪奢な雰囲気が漂っている。が、ギアッチョは勿論そんなことに躊躇など しない。ずかずかと入り込んで好き放題に飯を食い、シエスタについで もらったワインを豪快に飲んでいた。さっきまではキュルケと話をしていたが、 ちょっと踊って来ると言って彼女はホールの中央へと歩いていったので、 ギアッチョは今デルフリンガーと会話をしている。 「いやー、しかしダンナも使い魔として召喚されるぐれーだからなんか能力は 持ってんだろーなとは思ってたが いやはやこんな化け物じみた魔法を 使えるたぁね!おでれーたよ俺は」 うんうんと何か一人で納得しているデルフだった。 「あれは魔法じゃあねー スタンドっつーオレの世界の能力だ」 デルフは基本的には己の使い手に味方するあまり主体性のない剣なので 特に情報をバラされる心配はない。そういうわけでギアッチョはルイズの他に このデルフリンガーにだけは隠し事をやめている。 「ほー そうかい しかしおっそろしい能力だよなぁ・・・無詠唱で一瞬の うちに空気までも氷結させるなんざよー あいつらメイジにしてみりゃあ まさに魔人の所業だね あん時ゃ流石の俺もブチ砕けそうだったぜ」 スタンドとは精神のヴィジョン。つまり彼らメイジの扱う魔法と、本質的には 同等のものだと言える。もしもギアッチョのスタンドがなんらかの形を取る ものであったならば、彼らには恐らくその姿が見えていたはずだ。デルフ リンガーには、本人はまだ気付いていないが強力な魔法吸収能力がある。 デルフがあの極寒の世界でブチ割れずに済んだのは相当に強力な固定化が かかっているということともう一つ、彼が所持しているその力がスタンド・・・ 精神の力に密かに反応して発動していたせいなのだが、彼がそれに気付くのは もう少し後の話だった。 テーブルの上で意外な健啖ぶりを発揮しているタバサや性懲りもなく次々と 女性を口説いてはモンモランシーに殴られているギーシュを見ながら、 ギアッチョはホールの奥へと進む。はたしてルイズはそこにいた。 「よぉ」 上から降ってきたその声に、ルイズは握っていたフォークを置いて顔を上げる。 「何してんだ? こんなとこでよォ~」 自分を見下ろすギアッチョから眼を逸らして、ルイズは答えた。 「・・・わたしは主役なんかじゃないもの」 一人で勝手に突っ走って仲間に迷惑をかけ、そして自分の身まで危うくし挙句 己の使い魔まで亡くしかけたのだ。そんな自分にどうして土くれのフーケを倒した ヒーローになる資格があるだろうか。キュルケ達に説得されて一応は着飾って 来たルイズだったが、入場した途端にホールの門に控える衛士に大声で紹介を され、彼女はもう恥ずかしいやら悲しいやらで一目散に壁際の席まで逃げて きたのだった。 「本当なら謹慎をくらっていてもおかしくないのに・・・場違いにも程があるわ」 ギアッチョは頭を掻いた。そりゃあいくら皆無事で済んでるからと言ってそう 簡単に開き直れるわけもないだろう。 全く手のかかるガキだ、とギアッチョは溜息をついた。 「ま・・・反省するのは結構だがよォォー てめーが主役じゃないなんてこと だけはねーぜ」 「え・・・?」 きょとんとしているルイズを見下ろして、ギアッチョは続ける。 「あの時てめーが討伐隊に志願しなきゃあどうなった?おそらくキュルケは 手を上げないだろう・・・それならタバサも志願する理由はねえ ギーシュの 野郎も立ち聞きもそこそこに逃げていっただろうよ そして教師共が 行かされることになれば・・・フーケを逃していたか、もしくは殺されていた 可能性もあった」 ギアッチョは眼鏡を中指で上げて、こう結論した。 「てめーが杖を掲げたからこそ、今のこの状況があるってわけだ」 ルイズはしばらくギアッチョを見上げて呆然としていたが、やがて我を取り 戻すと、ぷいと横を向いて言う。 「・・・な、何よ 危うく丸め込まれそうだったけど・・・結局は上手いこと言って 励まそうとしてるだけじゃない 余計にみじめになるだけだわ」 ネガティヴまっしぐらである。そんなルイズにギアッチョはもう一つ溜息を つくと、座っている彼女の目線に合うようにしゃがみこみ・・・その綺麗な 鳶色の瞳を覗き込んで、 「嘘じゃあねえ」 ただ一言、こう言った。 ルイズは当惑している。ギアッチョはいつも通りの凶眼で、ルイズをいつも 通りに睨んでいるだけだ。だけど何故だか今、その瞳の奥に優しさが 見えた気がして――有り得ないことだと自分に言い聞かせつつも、一度 そう思ってしまったルイズは彼と眼が合っているのがどんどん恥ずかしく なって、結局すぐに眼を逸らしてしまった。この使い魔は本気で言っている のだろうか?いや、そんなわけはない・・・今日わたしがしたことを知ってて 誰が本気でそんなことを言う?・・・・・・でも、もし本気だったら? やや混乱気味のルイズの頭の中で肯定と否定がぐるぐる回る。 ・・・もし、本気だったら。 「・・・・・・嘘じゃないなら」 ルイズは横を向いたまま、スッと手を差し出す。 「・・・・・・お・・・踊りなさいよ・・・」 ギアッチョは思わず「ああ?」と言いかけたが、更に一つ溜息を吐き出すと、 すっくと立ち上がり・・・ルイズの手を取った。 「・・・・・・一回だけなら付き合ってやる」 意外にも――実に意外にも、ギアッチョはダンスが上手かった。やり方 など一切知らないらしく本当に適当なダンスだったが、ロクに左足が 使えないのですぐにバランスを崩すルイズをリードして、足一つ踏むこと なく踊っている。 「・・・う、うまいじゃない・・・あんた」 それは当然だった。ギアッチョはスケートでアスファルトを時速80キロ以上で 走る男である。バランス感覚には相当なものがあった。 ――ったくよォォーー 寝ても醒めても殺しに塗れてたオレがなんだって こんなところでガキ相手にダンスを踊ってるってんだァァ? ギアッチョはルイズを見た。更にバランスが崩れやすくなるというのに、 赤く染まったその顔はギアッチョから背けられたままだ。「全く不器用な ガキだな・・・」と、ギアッチョは今度は心の中で嘆息する。 ――とっとと帰りてーところだが・・・もう少してめーの面倒を見てやると するぜ しょーがねーからよォォ~ 世にも不機嫌に見える顔で、しかしギアッチョは踊り続けた。 「おでれーた!」 さっきまでルイズが座っていた席に松葉杖と共に立てかけられている 魔剣は、実に機嫌の悪そうな男と彼から眼を背け続ける少女という、 全く不可解な組み合わせのダンスを見ながらそう叫んだ。 「しかも使い魔とご主人様だ!こんなダンスは見たことねえ!」 デルフリンガーはもう一度、心底面白そうに叫ぶ。 「こいつはおでれーた!」 ==To Be Continued...
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登録日: 2015/07/01 Wed 23 58 36 更新日:2021/04/22 Thu 19 06 22 所要時間:約 3 分で読めます ▽タグ一覧 MF文庫 スピンオフ ゼロの使い魔 ゼロの使い魔外伝 タバサの冒険 タバサ ヤマグチノボル ライトノベル 外伝 わたしは人間なの。だから人間の敵は倒す……それだけ。 ゼロの使い魔外伝・タバサの冒険とは、 ヤマグチノボル原作のライトノベル『ゼロの使い魔』の登場人物・タバサを主人公にしたスピンオフ作品である。 既巻は3巻。 今拓人によるコミカライズもされている。ただし途中から原作9巻から10巻のアーハンブラ編へとシフトする。 【あらすじ】 本編の舞台となるトリステイン魔法学院に通う少女タバサは、 実はガリア王国の暗部の汚れ仕事を請け負う秘密組織『北花壇騎士団』の一員であり、本名をシャルロット・エレーヌ・オルレアンと言った。 タバサはガリア王国の傲慢な王女イザベラの命を受けて、様々な困難な任務に狩りだされる。 しかし、タバサは文句ひとつ言うこともなく、無理難題の任務の数々をこなしていく。 そこにはタバサの生家と王家の血塗られた因縁が隠されていた―― 【概要】 基本的に、任務を与えられたタバサが現地へ赴いて現地の人たちと交流しながら任務を果たしていくという一話完結方式をとっている。 だが中にはシルフィードを主人公にしたものや、タバサの過去編も存在しており、タバサという人物をいろいろな方向から掘り下げていっている。 本編とはリンクしており、それぞれの話が本編のどのあたりの出来事なのかをわかるようになっている。 イザベラは後に本編にも登場。本作のエピソードや登場人物はいずれも人気の高いものが多い。 【主な登場人物】 タバサ トリステイン魔法学院に通う2年生。ガリアからの留学生であり、小柄な体と青い髪と目を持ち、二つ名は『雪風』 本来はガリアの王家の一門であるオルレアン家の娘であるが、現在その地位は剥奪されていてタバサは偽名である。 母の心を魔法の毒物で狂わされており、その解毒剤を手に入れるためと復讐のために、いかなる危険な任務をも受けている。 性格は無口で人付き合いを自分からはしないタイプ。 しかし情には厚く、任務の達成には遠回りになるとわかっていても人命や心を優先した作戦をとることもある。 反面、隠れドSなところもあり、普段はおとなしく見えてもちゃっかりえげつない手段で意趣返しをすることもある。 シルフィード タバサの使い魔で、2年生昇級の『使い間召喚の儀』で呼び出された。 周りにはウィンドドラゴンに見せているが、実は人語を解する絶滅種『風韻竜』の生き残りで、本名はイルククゥ。 年齢は200歳を超えているが、精神年齢の発達は遅く、おつむは幼児並み。 明るく優しく奔放な性格で、危険な任務ばかりさせられるタバサのことを常に心配している。 なお、主人といい勝負の食いしん坊である。 イザベラ ガリア王国の第一王女で、国王ジョゼフの一人娘。 王家の人間であるためタバサと同様の青い髪と瞳を持っているが、印象は凶暴。ファンからの愛称はデコ姫。 気まぐれで冷酷かつ嗜虐的な性格をしており、タバサとは正反対。 タバサの属する北花壇騎士団の団長を兼任しており、彼女がタバサに命令を出すところから物語は始まる。 魔法の才能に乏しく、強いコンプレックスを抱いており、天才的なメイジであるタバサに強く嫉妬していることから、 あてつけにタバサにわざと危険で困難な任務ばかり当てている。 【これまでのお話】 第一話、タバサと翼竜人 北花壇騎士団員タバサに任務が下った。指令は、エギンハイム村で村人と対立している翼人を討伐せよ。 しかし、現地に赴いたタバサの前に、人間と翼人の共存を願う恋人たちがやってきて、なんとか討伐を中止してくれと頼んでくるのだった。 第二話、タバサと吸血鬼 サビエラ村で、一晩のうちに若い娘が体中の血を吸い尽くされて殺害される事件が続発した。ハルケギニア最悪の妖魔、吸血鬼の出現である。 吸血鬼討伐に出発したタバサだったが、吸血鬼は普通の人間と見分けがつかない。 姿なき殺人鬼に対して、タバサがとる作戦とは。 第三話、タバサと暗殺者 王女イザベラに暗殺を狙っている者がいるとの疑惑があがった。タバサは魔法でイザベラと入れ替わって捜査をはじめる。 だが、暗殺者の正体と黒幕は意外な人物であった。 第四話、タバサと魔法人形 珍しい任務が下った。ガリアの名門の引きこもりの少年を学校に通わせろというのだ。 危険のない任務に退屈げなイザベラから、たわむれに魔法人形スキルニルを譲られたタバサはいつもどおりに任務に向かう。 しかし少年の冷え切った家族関係と、彼を一身に思うメイドのアネットの訴えに、タバサはある考えをめぐらせるのであった。 第五話、タバサとギャンブラー 違法賭博場撲滅の命を受けたタバサ。偽名を使って潜入するが、カジノのディーラーはなんとタバサの家で昔に仲のよかった使用人だった。 しかも、イカサマ賭博の証拠を掴まなくてはカジノをつぶすことはできない。 情と使命、さらにタバサの目をもあざむくカラクリの正体とは? 第六話、タバサとミノタウロス 任務を終えて、とある村で休息をとっていたタバサは、平民の老婆から助けを求められる。 エズレ村に人食いのミノタウロスが現れ、生贄を求めているというのだ。 助っ人を引き受けたタバサだったが、ミノタウロスの正体は人攫いの野盗がミノタウロスを騙ったものだった。 追い詰められるタバサだったが、なんとそこに本物のミノタウロスが現れる。しかも、そのミノタウロスは人語をしゃべり、自らを貴族と名乗った。 番外編、シルフィードの一日 とある平和な日、のんびりとしていたシルフィードはニナという少女と仲良くなる。 けれども、近隣の村の住人にはドラゴンであるという理由だけで嫌われてしまった。 使い間仲間に慰められても傷心のシルフィード。だが、そんなシルフィードを救ったのは少女の純粋な心であった。 第七話、タバサと極楽鳥 イザベラの気まぐれと嫌がらせで、火龍山脈に住む極楽鳥の卵を採りに行かされることになったタバサ。 そこでタバサは、料理人を目指して修行中というリュリュという少女に出会う。 だが極楽鳥は強力な火竜に守られていて手出しができない。そこでタバサは、錬金を使っての料理という新境地を目指している リュリュの魔法を使おうと考えるが、リュリュは大きな壁にぶち当たっていた。 第八話、タバサと軍港 ガリア王国軍両用艦隊の軍艦が次々と爆破されるという事件が起き、タバサが調査に派遣される。 幹部士官らに邪険にされながらも、協力者を得て調査を進めるタバサだったが、次第に事件の背後に潜むどす黒い影に気づいていく。 それはタバサ自身の生い立ちにも関わる。人の心を弄ぶ禁呪を用い、無関係な人間を大勢巻き込むことをも辞さない狂気だった。 第九話、タバサとシルフィード シルフィードがタバサに召喚された直後のお話。 見るからにちんちくりんなのに偉そうなタバサに不満タラタラのシルフィードだったが、ある日ひとりでお使いに出かけることになった。 ところが世間に疎いシルフィードは悪い人にだまされて…… 第十話、タバサと老戦士 コボルドに襲われているというアンブラン村に赴いたタバサ。彼女はそこで、村人から慕われているユルバンという老戦士に出会う。 タバサの実力を持ってすればコボルドは敵ではなく、任務達成は容易なものと思われた。 だが、タバサたちは村で過ごすうちに奇妙な違和感を感じ出す。さらに血気にはやったユルバンがコボルドに囚われてしまい…… 第十一話、タバサと初恋 最近タバサの様子がどうにも変だ。妙にそわそわして落ち着かない様子だったりしている。 それが恋だと思ったシルフィードは一念発起、なんとかタバサの初恋を成就させようとあの手この手を試みるけれど空回りばかり。 一方で、タバサも自分の中に芽生えた不思議な気持ちがわからずに自問自答を続けていたが…… 第十二話、タバサの誕生 タバサがまだシャルロットと名乗っていた時期の話。 ガリアの先王が亡くなり、時期後継者候補のひとりであったシャルロットの父オルレアン公が暗殺された。 ジョゼフが王となり、オルレアン派最後のひとりであるシャルロットは母の身柄と引き換えに怪物の跋扈するファンガスの森に送られる。 そこは凶暴な合成生物キメラたちの魔境であり、ボス格である『キメラドラゴン』を倒さなければならない。 戦闘経験などないシャルロットはキメラに襲われて絶望するが、そこを森の猟師であるジルという女性に救われる。 ジルから戦い方を学び、シャルロットは戦士として成長を始める。だがそれは、長くつらい戦いの始まりでしかなかった…… 追記・修正はムラサキヨモギを噛み締めながらお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] これらの中では極楽鳥の話が一番好きかな。リュリュがすごくいい子ってのもあるけど、彼女の魔法が完成したらハルケギニアから飢餓がなくなりそう -- 名無しさん (2015-07-20 01 11 09) アニメの最大の罪はデコ姫を出さなかったことである -- 名無しさん (2015-08-06 00 39 39) なんやかんやでかなり続いたんだな -- 名無しさん (2015-09-15 16 55 09) OVAでシリーズ化希望 -- 名無しさん (2016-05-16 13 15 48) ふと思ったけど、錬金で食料作れたら人口爆発につながるんじゃなかろうか -- 名無しさん (2017-02-05 21 45 18) 読み返すと、ハッピーエンドで終わらない話もあるし、本編に比べて大人向けファンタジーって感じがしたな -- 名無しさん (2018-07-04 00 01 47) 作れたらというより、錬金による食料生成はあまりうまいものが作れないだけで昔から可能だったっぽい。普段からは食べてないだけで深刻な食糧不足ならそれで食べ物を作るだろうからハルケギニアでは餓死なんて基本ないんじゃないか。魔法のサービスは思いのほか安いようで、大豆に錬金をかけてつくる代用肉のほうが本物の肉よりずっと安いみたいだし。 -- 名無しさん (2018-07-04 07 50 54) 時系列的にはちょっとおかしな話もある。「タバサとシルフィード」では彼女はサイトと同じ日に召喚されていてまだいくらも時間が経ってないはずなのに、タバサの任務や境遇について妙に詳しかったりとか。 -- 名無しさん (2018-07-04 07 54 31) 名前 コメント
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ゼロの使い魔~双月の騎士~ レビュー (ジャンル:ファンタジー、ラブコメ) 全12話 監督:紅優 アニメーション制作:J.C.STAFF 評価 ストーリー キャラクター 声優 映像・作画 2点 2点 16点 16点 合計36/100点 感想 ラブコメ作品なのに戦争をテーマにしています(笑) 才人は平和主義者でルイズは名誉の為なら死ねるという事で対立します。 突然の事だったから私も見ていて呆然としましたが、 冷静にならなくてもこの作品で描く内容ではないと思います。 人を殺し殺される戦争は愚かな行為であるのは誰もが認める事だと思います。 名誉の為なら死んでも良い、貴族の誇りだとか、そういうのも違うでしょう。 しかしその程度の説得力もこの作品にはありません。 ストーリーに都合の良いように無理矢理二人を対立させてもねぇ。 もしも真剣にこのテーマを描きたいなら、 アニエスとコルベールをメインキャラにすべきでしょう。 しかしそれでは全くの別作品でしかないわけです。 私だったら無理な事はせず、 前作のようなラブコメを作ればよかったと思います。 何故この作品でこのテーマを描こうとしたのか?さっぱり分かりません。 「ゼロの使い魔~双月の騎士~」アニメ公式サイト
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間章 貴族、平民、そして使い魔 塗りつぶしたような王都トリスタニアの闇空に、青い絵具が一滴こぼれた。 王宮へと近づくにつれて、どんどん大きく形を変えてゆく。やがて 夜目にも分かる程鮮やかに竜の姿を取った時、それはぶわりと中庭へ 降り立った。 突然の闖入者に、宮廷内は騒然となった。王宮警護の当直である 魔法衛士のマンティコア隊員達が、次々と駆けつけては風竜を取り囲む。 「ね、ねえ君・・・これは流石に、目立ちすぎなんじゃ・・・・」 竜の背から飛び降りながら不安げに呟く金髪の少年に、 「一刻を争う事態なんでしょう?お上品にやってる場合じゃないじゃない」 すました顔で赤毛の少女。彼女の後から眼鏡をかけた少女が、そして 同時に剣呑な空気を纏った男が降り立つ。最後にひらりと飛び降りて、 桃色の髪の少女は大きく名乗りを上げた。 「わたしはラ・ヴァリエール公爵家が三女、ルイズ・フランソワーズです アンリエッタ姫殿下に取次ぎ願いたいわ」 「ああ、ルイズ・・・!あなた達!無事に帰って来たのですね!」 何故かヴァリエールの名を恐れたマンティコア隊の隊士達によって、 ルイズ達はあっさり謁見の運びとなった。キュルケ達三名を待合室に 残し、ルイズとギアッチョはアンリエッタの居室で対面する。 「姫さま・・・」 二人はひしと抱き合った。そうしてから、ルイズは旅の顛末を説明 してゆく。キュルケ達との合流、陸と空の賊の襲撃、ウェールズとの 邂逅・・・・・・。 「・・・そう、ですか・・・」 全てを聞き終えて、アンリエッタはぽつりと呟いた。 「・・・やはり 殉じられたのですね・・・ウェールズ様は・・・」 「・・・あ、あの 姫様・・・その、ウェールズ様のことは」 「まさか魔法衛士隊に裏切り者がいるとは・・・護衛達のことは 新たに考え直す必要があるかも知れませんね」 「姫様・・・?」 「この手紙とレコンキスタの情報、確かに受け取りました ルイズ、 本当にありがとう よくぞ我がトリステインを救ってくれました」 「・・・・・・いえ、滅相もございません」 ルイズは胸が痛んだ。アンリエッタは今必死に王女として、 政を司る者として振舞おうとしているのだ。ならば、ルイズが その意志を汲まないわけにはいかなかった。アンリエッタの ように、ルイズもまた務めて無機質に言葉を重ねる。 一通り事務的なやり取りを終えた後、アンリエッタはその表情を 少し柔らかくした。 「あの者・・・ワルドとは、杖を交えたのですか?」 「・・・ええ お陰でこの通り、皆傷だらけですわ」 ルイズは軽口を叩いてみせる。その程度には、心の傷も癒えた らしい。それが分かったようで、アンリエッタもくすりと 笑って言葉を継ぐ。 「重傷を負った者はいないのでしょう?あのワルドをその程度の 代償で退けるとは、あなたのお友達は皆頼もしいのですね」 「・・・はい 自慢の友人達ですから」 花のような笑みで、ルイズはそう答えた。 「それに・・・言いましたでしょう?彼がいれば、どんな任務も きっと達成して御覧にいれますと」 アンリエッタはルイズの後ろに控える男を見る。 「ふふ・・・とても信頼されているのですね、使い魔さん もう一度言わせていただきますわ・・・ありがとうございます」 「やるべきことをしただけだ」 どうでもよさげに、彼は答えた。 「それでも、ですわ 本当に、今回は申し訳ありませんでした まさかあの謹厳実直な男が裏切るなど、夢にも思わなかったのです」 謝意を表すアンリエッタを、ルイズが慌てて止める。 「姫様、とんでもないことでございます・・・!恐れながら、 彼の心は幼少より付き合ってきたこのわたくしにも看破すること 能いませんでした 如何な人物であろうとも、あの者の秘めたる 牙を見抜くことは出来なかったと存じます」 少々大げさだが、ルイズの心は伝わったようだった。静かに 立ち上がって、アンリエッタはくすりと笑う。 「そうですね・・・そうかも知れません さて、此度は重ね重ね 感謝しますわ ゆっくりと身体を休めなさいな オールド・オスマンに 言えば休みもいただけるでしょう」 「もったいないお言葉です」 頷いてから、アンリエッタはギアッチョに向き直った。 「わたくしの大切な友達を・・・頼もしい使い魔さん、どうか これからも守ってあげてくださいな」 そう来るとは思わなかったらしい。刹那の沈黙の後、ギアッチョは ちらりとルイズの後姿に眼を遣る。躊躇いがちに頭を掻いて、 「・・・まあ、な」 彼は短く、そう返した。 「・・・成る程 放蕩三昧たぁいかねーわけか」 待合室へと足を向けながら、ギアッチョは一人ごちる。並んで 歩くルイズがそれに言葉を返した。 「そりゃ、地位が高ければ高い程責任は増すものでしょう?」 「ノブレス・オブリージュってやつか 姫さんと言やぁ 好き放題に遊んで暮らしてるようなイメージしかなかったからな」 「・・・イタリアには、王室はないの?」 「ねーな 五十年程前に廃止されたらしいが、よくは知らねぇ」 「・・・廃止・・・?」 王室の廃止など、トリステインの人間にはさっぱり理解出来ない 話だろう。少し考えてみたが、ルイズにもやはり解らなかった。 そのままどちらともなく会話が途切れ・・・二人の間に聞こえる ものは、かつかつと響く靴の音だけ。 やがて沈黙を打ち破って、ルイズが呟くように口にした。 「・・・ねえ さ、さっきのこと・・・本音だったの?」 「ああ?」 何の話か分からずに、ギアッチョは怪訝な顔をする。 「や、だ・・・だから・・・わ、わたしを守ってくれるって・・・」 正確には曖昧に答えを返していただけだったが、ルイズには それがどうにも嬉しかった。そこで、ギアッチョ本人の口から もう一度ちゃんと聞きたかったのだが、 「・・・さてな」 眼鏡を弄りながら、ギアッチョは適当に返事をするだけだった。 「ちゃ、ちゃんと答えなさいよ!もう!」 「まーまールイズ こう見えても旦那はおくゆかしいんだって たとえ死んでもおめーを守り通そうと思っていても、口にゃあ 中々出せないお人柄なのさ いやぁ旦那にも可愛いとこr」 べらべらと喋るデルフリンガーの声にビキビキという音が重なり、 それきり魔剣は完全に沈黙した。「まぁ、それなら確かに 可愛いんだけど」などと思いつつ、ルイズはそれ以上の問答を 止める。ギアッチョの表情は、相変わらず読み取れなかった。 「遅いわよー、ルイズ!」 正体無くソファに背中を預けていたキュルケが言う。 待合室で雑談に興じていた三人は、その言葉を合図に席を 立った。 「お待たせ 本当、遅くなっちゃったわね」 テーブルの上に置かれた水盆に浮かぶ針に眼を遣って、 ルイズはそう答える。時刻は深夜に差し掛かろうとしていた。 中庭へ向かいながら、ギーシュが問い掛ける。 「報告はもう済んだのかい?」 「ええ ・・・詳しくは言えないけど、任務は成功よ あんた達のお陰だわ・・・本当にありがとう」 「何言ってんのよ 覚悟してなさいよ?私達が困った時は、 あなたに助けてもらうんだから」 冗談めかして返すキュルケに、 「と、当然でしょ!今に見てなさいよ!」 とルイズが答える。それを聞いて、ギーシュが笑った。 「アッハッハ ルイズ、喧嘩じゃないんだからさ!しかし 長い旅だったね・・・早くモンモランシーに会いたいよ」 「あら、あなたまだ続いてたの?」 「意外」 本に眼を落としながら、タバサはぽつりと呟いた。 「さらりと失礼な・・・僕達の愛は永遠、そして無限なのさ」 「女と見れば口説きに走る男の言うことじゃないわね」 「あんたが言うことでもないと思うけど」 他愛のないことを喋りながら、ルイズ達はシルフィードの 待つ中庭へ到着する。哨戒を続けているマンティコア隊の 隊士に一礼して、彼女達は空へと飛び立った。 居室の窓辺に立って、アンリエッタは飛び去るシルフィードを 物憂げに眺めた。彼女の右腕であり、実質的なトリステインの 首脳でもあるマザリーニ枢機卿に種々の報告と相談、指示を終え、 アンリエッタはようやく一人の少女に戻ることが出来た。 誰も入れないように命じたその部屋で、彼女は力なくソファに 座り込む。 ゆっくりと右手を開くと、そこには美しく輝く風のルビー。 その深い光を見つめながら、アンリエッタは先刻を思い返した。 この部屋を辞する間際にルイズがアンリエッタに差し出したもの、 それが風と水、二つのルビーだった。 片割れである水のルビーは、褒賞としてルイズに下賜した。 文字通り命を賭けた彼女の働きには、それでも足りない程だと アンリエッタは思っている。――そして、風のルビー。 ウェールズの、それは唯一つの形見だった。ルイズは、 ウェールズは勇猛に戦い、そして散ったと言う。最後に一言、 アンリエッタの幸せを願って逝ったとも。 ルビーを両手で握り締め、俯いた額に強く押し当てる。恋人との 思い出が、アンリエッタの心を無数に駆け巡っていた。 「・・・あなたのいないこの世界の、一体どこに幸せがあると 言うのですか・・・・・・?」 万感の悲哀を込めて、アンリエッタはそう呟く。その声はか細く 震えていた。 「・・・・・・ぅ・・・」 耐え切れなかった。押し込めていた悲嘆が、こらえていた涙が、 堰を切って溢れ出す。 「・・う・・・ぅ・・・ううぅうぅぅうぅ・・・・・・ッ! ウェールズさまぁああぁぁ・・・・・・・!!」 誰も踏み入ることの出来ない部屋で一人、少女はいつまでも 泣き続けた。 前へ 戻る 次へ
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※タバサが平成版ガメラに登場するギャオスを召喚。 ゼロの使い魔外伝‐災いのタバサ‐1 ゼロの使い魔外伝‐災いのタバサ‐2 ゼロの使い魔外伝‐災いのタバサ‐3 ゼロの使い魔外伝‐災いのタバサ‐4
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「ローゼンメイデン」の蒼星石と「仮面ライダーカブト」の矢車想 第一章 ゼロの使い魔 緑と蒼の使い魔-01 第一話 召喚
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前ページ次ページゼロの使い魔人 ――鼓膜をつつき回す電子音が、沈み込んでいた彼の意識を『現実』へ引き揚げる。 (う……) ぼやけた目を一、二度しばたたかせた龍麻は、更に指で軽く瞼の上から揉んで視界をはっきりさせる。 「…俺は、――そうだったな」 回転を始めた脳細胞が、彼自身が置かれた状況を余す所無く伝えて来る。 龍麻はその事実に一つ溜め息を付くと、腕時計のアラームを止め、その場で上体を伸ばした。 被っていた毛布を畳んで側に置くと、ブーツの紐を締め直し、相棒たる黄龍甲を腕に着け、立ち上がるとおもむろに部屋を見回した。 ――十二畳程の室内。机に本棚、来客用の椅子と小テーブルやクローゼット、天蓋付きのベッド…。 そのどれもが、手の込んだ細工と意匠が施された、上質な代物であるのは一目で解る。 そして…寝台で穏やかな寝息を上げている、龍麻にとっての疫病神といえる、部屋の主たる少女。 …時刻は5:30過ぎ。以前なら中距離走を始め、瞑想も含めた体力、技倆維持の各鍛錬に当る時間なのだが―― 「――洗濯しろとか言ってたな。場所は…、適当に誰か捕まえて聞くか」 床に散らばった服と自前の洗面具を手に、龍麻は静かに部屋を出た。 廊下を通り、階段を降りた所で、視界の端に人影を見つけ龍麻は足を止めた。 「…ん?」 即座に後を追いかけ、視線の先…10m程前を歩く後ろ姿を確認する。 ――肩で切り揃えた黒髪に、エプロン姿の少女である。両手に抱えた籠には、洗濯物らしき一杯の荷物。 渡りに船とばかりに、声を掛ける龍麻。 「待ってくれ。忙しそうな所を悪いが、少し聞きたい事があるんだが」 「はい?」 すぐに立ち止まり、こちらへと振り向いた少女に龍麻は歩み寄る。 「――どなたですか?」 「色々あってな、昨日から此処で厄介になる事になった者なんだが」 それを聞いた少女の顔に、何か閃いたかの様な色が浮かぶ。 「――もしかして、あなたミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」 「前に、やむにやまれずが付くけどな。…知っているのか?」 「ええ。なんでも、召喚の魔法で平民を呼んでしまったって。噂になってますから」 「そりゃまた…」 悪名なんとやら、かと内心ぼやく龍麻。 「それで、何かご用件でも?」 「ああ、洗濯をしろとか言い付かったんだが、それに使う道具やら場所がわからなくてな。出来たら、教えて欲しいんだが」 「それでしたら、私の後に付いて来て下さい。私もこれから洗濯を始める所ですから」 「そうか。なら宜しく頼む」 「はい」 笑みを浮かべつつ、頷いた少女は踵を返し歩き出すと、龍麻もそれに続く。 「――っと、まだ名乗ってなかったな。俺は緋勇龍麻。緋勇が姓で、龍麻が名前だ。宜しくな」 「変わったお名前ですね……。私はシエスタといいます。あなたと同じ平民で、貴族の方々を お世話する為に、ここでご奉公させて頂いてるんです」 「そうなのか」 それで会話は終わり、建物の裏手に置かれた、洗い場に案内される。 井戸から汲み上げた水を洗濯桶に張り、洗濯板と石鹸で汚れを落としに掛かる。 そういった作業をシエスタを始めとする大勢の使用人達と共に、黙々とこなし終わりが 見えかけた頃には、結構な時間が経過っていた。 後片付けも含め、一切を終わらせた所で、ルイズの居室へ戻る。 「入るぞ。起きてるか?」 ノックをし、呼び掛けるを何度か繰り返すも反応は無く、中へと入れば、当の部屋主は龍麻が起き出した頃と変わらず惰眠を貪っていた。 「……。ぐうたらしてないで、さっさと起きろ」 肩を掴んで強く揺すりつつ、(抑えた)声を掛ける。 「もう、なによ…。朝からうるさいわねぇ……」 「うるさいも何も、起きる時間だ。遅刻したいのか?」 「はえ? それはこま…って、誰よあんたは!?」 と、半ば寝ぼけた顔と声で叫ぶルイズに、ジト目を向ける龍麻。 「誰も何も、アンタに召喚ばれたばかりに人生棒に振った、不運な男だ」 「ああ、使い魔ね。そうね、昨日、召喚したんだっけ」 ……そこから着替えに関する意見と認識の相違で、両者はまたも舌鋒を交えたが、 ともあれ、着替え終えたルイズと龍麻が部屋を出た所で、隣室のドアが開いた。 ――鮮やかな赤髪と彫りの深い顔立ちに長身、褐色の肌と恵まれたスタイルが特徴的な若い女性である。 服装はルイズと同じ…つまりは貴族であり、この学院で学ぶ魔術師であろう…と、龍麻は見て取る。 「おはよう、ルイズ」 「おはよう、キュルケ」 前者は愉快そうな笑みを見せつつ、後者は露骨といっていい嫌悪を込めての挨拶である。 「あなたの使い魔って、それ?」 「そうよ」 龍麻を指差し、ルイズの返事を聞くや、遠慮もなにも無い笑声を廊下に響かせる。 「ほんとに人間なのね! 凄いじゃない!」 (まるきり珍獣扱…否、晒し者だな、こりゃ…) 「『サモン・サーヴァント』で、平民喚んじゃうなんて、あなたらしいわ。さすがはゼロのルイズ」 「うるさいわね」 最後の一言に、只でさえ不愉快そうなルイズの顔に、更に皺が寄るのを龍麻は見た。 「あたしも昨日、召喚に成功したのよ。どうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわよねぇ~。来なさい、フレイム」 との、キュルケの自慢気な声に合わせたかの様に、室内から這い出したのは…。 「――只のでかいトカゲ…、な訳無いか」 コモドドラゴン以上の体躯を持ち、それ自体が炎の塊で出来ている尻尾に、口腔の端からも時折、炎が洩れ出している。 (流石にあの旧校舎地下や天香遺跡でも、こんな奴は棲息でなかったな……) 「これって、サラマンダー?」 凝視する龍麻を余所に、ルイズが悔しそうに聞くや、そうよー、火トカゲよー、と、ひとしきりキュルケがその火 トカゲの出自や価値を自慢し、そこからやり取りを重ねる度に、ルイズの表情と声はますます不機嫌さを増す。 と、不意にキュルケは龍麻へと視線を向けた。 「あなた、お名前は?」 「緋勇龍麻だ」 「ヒユウタツマ? ヘンな名前」 予想通りの答えに、小さく肩を竦めてみせる龍麻。 ここに居る間、際限無く掛けられるだろう台詞に、逐一反応するだけ精神エネルギーの無駄である。 「じゃあ、お先に失礼」 そう言ったキュルケは外套を翻し、颯爽たる足取りでフレイムを引き連れ、部屋を後にする。 その姿が廊下の向こうに消えると、ルイズは憤懣やるかた無しな顔で叫ぶ。 「悔しー! なんなのあの女! 自分が火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって! ああもう!」 「………」 無言を保つ龍麻だが、ルイズの癇癪は治まらない。 「あんたは知らないだろうけどね、メイジの実力を測るには、使い魔を見ろって言われているぐらいよ! なんであのバカ女がサラマンダーで、わたしがあんたなのよ!」 「そりゃお互い様だ。しかしな、召喚のやり直しが出来ん現状、今居る奴が人間だろうが何だろうが、 そいつと組むしかないだろう。無い物ねだりしても、仕方無い」 「メイジや幻獣と平民じゃ、狼と駄犬程の違いがあるのよ」 ルイズは憮然たる表情で言い捨てる。 「駄犬呼ばわりかよ。…そういや、さっきゼロのルイズとか言われてたが、何か曰くでもあるのか?」 「ただの渾名よ。…あんたは知らなくていい事だわ」 ルイズはバツが悪そうに言う。 「そうか。忘れろっていうなら、忘れるさ。ゼロだなんだの、俺にはどうでもいい事だしな」 深く突っ込まない方がよし、と見て取った龍麻は、その単語を意識の隅へと放逐する。 「ほら、食事に行くわよ。さっさと付いて来なさい!」 「了解」 ――龍麻を引き連れたルイズは、学院の敷地内で一際大きい本塔の中に作られた、『アルヴィーズの食堂』へと入った。 ルイズが道々、説明する所によると、総ての学院生と教師陣は此所で食事を取るのであり、 又、『貴族は魔法をもってしてその精神と為す』をモットーに、魔法に止どまらず、貴族としての 教養や儀礼作法等も学ぶ…と、いった事を龍麻に語る。 「わかった? ホントならあんたみたいな平民は、この『アルヴィーズの食堂』には一生入れないのよ。感謝してよね」 「別段、入れなくとも一向に構わんけどな。食うだけならどこも同じだ」 「そう。なら次からは外で食べなさい。使用人達にはそう伝えておくわ。――ほら、椅子を引いて頂戴。 気の利かない使い魔ね」 「そいつは失礼。……で、俺の分はどこにある?」 既にテーブルに並べられ、湯気と芳香を立ち昇らせる質と量を満たした料理の群れに目もくれず龍麻が尋ねると、 着席したルイズは、無造作に床を指す。 「あんたのはそこ。何を騒いでも、それ以外は出ないし出さないから」 床に置かれた皿には、黒パン半切れと薄いスープが一皿だけである。 「……やれやれ」 口にしたのはそれだけで、龍麻は床に胡座を掻く。 「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ、今日も…」 と、室内に祈りの声が響く中、龍麻は龍麻で… (予め、マトモなモノなぞ出ないと予想はしてたが、残飯で無いだけマシか。…しかし、 『コレ』が続く様なら、外で現地調達でもして、食い扶持は自力で確保すべきだな……) 祈りを済まして食事を始める生徒達だが、龍麻もさして時間を掛けず空にした皿を手に、立ち上がる。 「ご馳走さん。外で待っているぞ」 卓上に空にした皿を置いた龍麻は、ルイズの返事を待たずに食堂を後にした。 前ページ次ページゼロの使い魔人
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ルイズは今夜も夢を見ていた。古ぼけた部屋の中の、かすみがかった人物達の夢。 ルイズはまた自分ではない誰かになっていて、かすみがかった部屋でかすんだ姿の まま、かすんだ男達と音の擦り切れた会話を交わしていた。 あの使い魔、ギアッチョを召喚した時から――いや、正確にはギーシュとの決闘を 終えた日から、ルイズはこの不思議な夢ばかりを見るようになっている。 使い魔となった者は、主人の目となり耳となる能力や人語を解する能力などを手に 入れる。ギアッチョにはそんな力はなかったが、ひょっとするとそれが夢の共有と いう形で発現しているのかもしれないとルイズは考えた。もしそうだとすると、この 夢を決闘の翌日から見るようになったということは――あの決闘を通して、 ギアッチョが自分を少し認めてくれたということなのかもしれない。ならば、と ルイズは思う。日々霧が晴れるように鮮明さを増してゆくこの夢は、彼が徐々に 心を開いていってくれているということなのだろうか。勿論、霧が全て消えれば 信頼度MAXなどというわけではないのだろうが、興味なんてさらさら無いように 見えるギアッチョが日々内心自分に心を開きつつあると思うと、ルイズはなんだか 無性に嬉しかった。 「どこに行くのよ」 ドアに向かって立ち上がったギアッチョにルイズが問いかける。外はもう双月が 煌々と輝いている時間である。 「剣の練習だ」 ギアッチョはそう言って喋る魔剣デルフリンガーを掴む。 「ちょっと待って わたしも行くわ」 そう言ってベッドから跳ね起きるルイズをギアッチョは物珍しげな眼で見る。 「ああ?何しに行くんだよ」 「何しにって・・・こっ、このわたしが見てあげるって言ってるのよ!ありがたく 思いなさい!」 ルイズはそう言うとギアッチョより先にドアを開けて行ってしまった。ギアッチョは その後姿を眺めながら、 「全くコロコロと機嫌の変わるヤローだなァァ あれが女心と秋の空ってヤツか? え?オンボロよォォ~~」 デルフリンガーの柄を鞘からわずか引き抜いて言う。話を振られた魔剣は、 「えっ!?あ、ハ、ハイ そのようでダンナ・・・」 先日ギアッチョにタンカを切った時の威勢のよさは微塵も無くなっていた。 ギアッチョが中庭へ出ると、先に到着していたルイズがキュルケと喧嘩をしていた。 その後ろには心配そうに主人を見守るフレイム。二人をサイドから眺めるような 位置でタバサが本を読んでいる。 「何でてめーらがここにいる?」 ギアッチョが当然の疑問を発すると、 「ちょっと食べすぎちゃったのよ で、運動しようと思ったらこのおチビちゃんが やって来たワケ」 返答にもルイズへの罵倒を織り交ぜるキュルケだった。 「だ、誰がチビよ!このストーカー!」 「ストッ・・・!?」 「ストッ・・・!?」 ルイズの一撃はキュルケの心を見事に刺し貫いた。別に感謝されたくてやって いたわけではないが、それにしたってキュルケの行動は――無論本人は肯定など しないだろうが――ひとえにルイズを心配するが故なのである。そこに気付いて いないとはいえ、ルイズのこの一言は相当なダメージだった。 「・・・ストーカーね・・・ フフフ・・・ストーカーですって・・・」 がっくりと肩を落としてブツブツと呟くキュルケに流石のルイズも異変を感じたのか、 「えっ!?ちょっとわたし何かした!?」とタバサに助けを求めている。 タバサが「どっちもどっち」と呟いたのを合図に、ギアッチョは彼女達から魔剣へと 視線を移す。 「で? どーすりゃあいいんだオンボロ」 「ど、どうするって?」 「剣なんざ扱ったこともねーって言わなかったか?喋れんなら剣の指南ぐれー 出来るだろ 前の持ち主の剣術とかよォォー」 完全に人まかせ、否剣まかせのギアッチョである。 「あっ、あーあーなるほど!だからダンナはわざわざこの俺をお買いになられた わけッスねェー!さすがはギアッチョのダンナ!」 デルフリンガーはなんとかギアッチョの機嫌を損ねまいと頑張っている。 「てめーそのダンナってのはどうにかならねーのか?」 「え・・・いや、相棒ってのもなんか違うし兄貴はもう取られてるし・・・」 よく分からないことを言い出すデル公だった。 「まぁいい で、結局どーすんだ」 「どうするって言われても・・・え、えーと じゃあとりあえず剣を抜いて・・・」 ギアッチョは言われるままに柄に手をかけ、剣を引き抜き―― バッグォォオオン!! 突如として中庭に轟音が鳴り響いた! 「何・・・だァァ~~~?」 ギアッチョが音のしたほうを振り向くと、岩が集まったような巨大な化け物が 本塔の壁を殴りつけているところだった。 「あれも使い魔だってェのか?」 抜きかけた剣を収めてルイズ達と合流したギアッチョが問う。 「あれはゴーレムよ それもとんでもなく大きい・・・!あんなものを練成する なんて・・・少なくともトライアングルクラスのメイジだわ」 どうやらあれは魔法によって作られるものらしい。彼女達の反応を見るに、 相当高度な魔法のようだ。 「なんにしても・・・見過ごすわけにはいかないわね!」 言うが早いかキュルケが走り出し、 「ちょっ、何やってんのよ!」 ルイズがそれを追いかける。タバサはギアッチョにちらりと眼を向けると、 「危険」 一言告げて先の二人を追いかける。ギアッチョは一つ大げさに溜息をつくと、 仕方なく彼女達のあとに続いた。 ゴーレムの肩の上に、黒衣に身を包んだ女性が立っている。彼女――土くれの フーケは、今まさに「仕事」の只中であった。大怪盗の名を持つ彼女の今宵の 目的は、トリステイン魔法学院本塔の宝物庫に秘蔵されている「破壊の杖」で ある。幾重にも封印が施された扉からの侵入を諦めた彼女は、魔法の薄い 外壁のほうを狙っていた。しかし内側よりは防御が甘いとは言え、高レベルの メイジがかけた固定化の魔法はそう簡単に破れるものではない。ゴーレムの 拳に、本塔の外壁は全くこたえた様子を見せなかった。しかしフーケは 慌てない。ぶつぶつと何事か呟くと、ゴーレムの両腕は鋼鉄の塊へと変じた。 フーケのゴーレムはそのまま壁へと突きのラッシュを放ち――何度目かの 突きで、固定されていた壁は見事に爆砕した。 フーケはちらと地面を見下ろす。学院の生徒達が何名かこちらに向かって いるが、彼女はクスリと笑うとそのまま宝物庫へと侵入した。 キュルケは走りながら魔法を唱え、ルイズとタバサがそれに続く。三者三様の 魔法が激突するが、多少の破損が認められるだけでゴーレムは問題なく 動き続ける。小うるさいアリ共を潰すべく、動く岩塊が右腕を打ち下ろし、 「きゃああっ!?」 間一髪逃れた三人に容赦なく左腕が振り下ろされる! 殺られる――!!ルイズは死を覚悟した。 しかし鉄の拳が彼女達を押しつぶす寸前、タバサが魔法を発動させる! バシィィィンッ!! タバサが打ち込んだ風がゴーレムの拳を刹那弾き返し、 「逃げて」 言うや否や二人に杖の先を向ける。 「なッ・・・タバサ!!」 タバサの風に二人はゴーレムの射程外まで吹っ飛び、そして再び呪文を 唱える間も、ましてや逃げる間も少女達の悲鳴が届く間もなく、タバサを 鋼鉄の拳が―― ズンッ!! 圧死の痛みの代わりに誰かに抱きかかえられる感触を感じて、タバサは 閉じていた眼を開いた。少女の眼に最初に飛び込んできたものは、 幾度も眼にしたことのあるボタンの多い服。そして彼女の頭上で、幾度も 耳にした声が響いた。 「てめー・・・シルフィードだったか?なかなかガッツがあるじゃあねーか」 ギアッチョが飛び乗ったシルフィードは、彼が何かを言う前に主人目掛けて 亜音速で飛来し、ゴーレムの拳が地面に激突する一瞬の間隙を縫って 主人を救い、空へと上昇した。タバサを捕まえたのはギアッチョである。 ギアッチョとシルフィード、それぞれが一瞬ですべきことを把握しなければ 出来ない芸当だった。使い魔同士の信じられないコンビネーションに、 破壊の杖を抱えて出てきたフーケを含む誰もが呆然と空を見上げていた。 一瞬あっけに取られていたフーケだったが、目的を果たしたことを思い出すと さっさとこの場から逃げることに決めた。地響きを立てて去ってゆくゴーレムを 見送って、 「大丈夫」 とタバサは一言口にする。それを合図にギアッチョが抱えていた手を離し、 タバサの命で風竜はゆるゆると地上へ向かった。 「――ありがとう」 シルフィードが地面に降り立つ直前、タバサは小さな声で言う。ギアッチョは 一瞬だけタバサに眼を遣ると、フン、と鼻を鳴らした。 「タバサ!!大丈夫!?タバサ!!」 「無事なのあんた達!?」 地上に戻った2人と1匹に、キュルケとルイズが駆け寄る。その顔は今にも 泣き出しそうだった。ギアッチョは3人を見渡して、誰にも怪我がないことを 確認すると、 「てめーらそこに並びな」 彼女達を一列に整列させる。 そしてルイズ達に待っていたのは。 「このッ・・・バカ野郎共がッ!!!」 鬼も裸足で逃げ出さんばかりのギアッチョの怒鳴り声だった。
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【種別】 使い魔 【解説】 始祖ブリミルが従えていたという四体の使い魔。 神の左手ガンダールヴ。神の右手ヴィンダールヴ。神の頭脳ミョズニトニルン。 現在確認されているのはこの三つのみ、もう一人は記すことさえはばかれるとのことで不明。
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「おい、起きな」 ガン!とルイズのベッドを蹴り飛ばす。しかしルイズは起きない。 ガン!もう一度、更に強く蹴り飛ばす。しかしルイズは目覚めない。 ドガン!更にもう一度、勢いをつけて蹴り飛ばす。しかしルイズは気付かない。 ベッドを蹴り飛ばしていた男の眼がスッと感情をなくす。 「クソガキ・・・このオレがわざわざ早起きまでして仕事をしてやってる ってェのによォォ~~」 ギアッチョの糸より細い堪忍袋の緒は音も立てずに切れた。 「ホワイト・アルバム」 ギアッチョがその言葉を口にした途端、ルイズの部屋は北極の海にでも 投げ込まれたかのように急激に冷え始めた。 ビシィッ! 窓が凍る。 ビシィィッ!壁が凍る。 ビシビシィッ!!絨毯が凍り、 ビキキキキッ!!シーツが凍り始めたところで、 「さ、さささ寒ッ!!?」 ルイズはようやく眼を覚ました。 「ようやくお目覚めかァ?お嬢様」 「なななななッ!何してんのよあんたはァーーーッ!!危うく二度と起きられ なくなるところだったじゃないッ!!」 「別にいいじゃあねーか そうなりゃ二度と早起きしなくて済むんだぜ それによォ これでおめーは『起きなきゃ殺される』って事が理解出来た わけだ 明日からはちゃんと目覚められるんじゃあねえか?ええおい」 ギアッチョの詭弁にもなっていない発言にルイズがブチキレかけた時―― バガンッ! ドアを開けたとは思えないような音を立ててキュルケが部屋に入ってきた。 「何やってるのよあなた達ッ!私の部屋まで凍り始めたわよッ!!」 「このお嬢様がいくら起こしても起きねェもんでよォォ~~ 手っ取り早く 起こす方法を取ったってェわけだ もう解除はしてある 安心しな」 勢いで飛び込んできたもののギアッチョは正直怖い。キュルケは怒りの 矛先をルイズに向けることにした。 「ああそう・・・それにしてもルイズあなた何歳よ?それとも睡眠に何か こだわりでもあるワケ?生死を賭けた状況になるまで起きないなんて そうそう出来ることじゃあないわよねぇ」 「うっ、うるさい!昨日は色々疲れてたのよ!」 昨日の礼を言うどころか罵倒で返してしまった。これだから私は、と ルイズは内心自分が情けなくなる。 「やれやれ、それじゃあ私は部屋に帰るわ。明日はこんなことになる 前に起きてよね」 そう言い残してキュルケは去って行った。 「ギアッチョ!あんたのせいよ!」ルイズはギアッチョをキッと睨む。 「あんたは今日から雑用だからね!まずは私の服を着替えさせてそれから ――、って!どこ行くのよッ!!」 ルイズが気付いた時にはギアッチョは既にどこかへ行ってしまった後だった。 「あのダサ眼鏡・・・どうやら使い魔としての自覚が足りないようね・・・! 私の従者としての立場を教育してやる必要があるわッ!!」 喉元過ぎればなんとやら。ギアッチョの呼び方があなたからあんたに戻って いることといい、どうやらルイズは昨日の恐怖をすっかり忘れ去って いるようだった。 あの後、結局ギアッチョは部屋に戻ってこなかった。ルイズの怒りは 収まらないようで、「せいぜい勝手に歩き回って朝食を食いっぱぐれれば いいんだわ!」と怒りもあらわに一人食堂に向かった。 食堂に入り、適当な場所を探していたルイズだが―― ドグシャアァ!! というおよそ食事をする場所では耳するはずのない音を聴いて振り返り。 そして奴を発見した。 ルイズ言うところのダサ眼鏡は―貴族専用の椅子にどっかりと鎮座し、 テーブルを殴りつけながらワケの分からないことを叫んでいた。 「テーブルマナーってよォォォ~~ イギリス式とフランス式で作法が 違うんだよォォォ~~~ スープの飲み方とかフォークの置き方とか よォーーーッ それって納得いくかァ~~?オイ? オレはぜーんぜん 納得いかねえ・・・ どういう事だッ!どういう事だよッ!クソッ!オレを ナメてんのかッ!一つに統一しろッ!ボケがッ!」 何度も殴られたテーブルは形が歪み始めたが、そんなことおかまいなしに ギアッチョは暴れ続けている。一方ルイズは、口の端を引きつらせたまま 完全に固まっていた。 数秒して我に返ったルイズが採った行動は、とにかくこの場から逃げる ことだった。「あいつが私の使い魔だってことがバレたら・・・!」と思うと ルイズの心臓は凍りつきそうだった。が、1秒後彼女の心臓は脆くも ブチ割れることになる。 「ああ~?ルイズじゃあねーか 遅ェぞご主人様よォォ~~!」 その瞬間食堂にある数十対の目が全てルイズに集まり―彼女は本気で 泣きたくなった。 「何やってんのよあんたはァーーーーーーッ!!!」 ルイズは激怒した。必ず、この横暴無比の使い魔を躾けねばならぬと決意 した。ルイズには裏社会の事がわからぬ。ルイズは、貴族のメイジである。 杖を振り、失敗を重ねて生きてきた。けれども無礼に対しては、人一倍に 敏感であった。 「見なさいよこれッ!テーブルがバキバキにヘコんじゃってるじゃないのよ! ああっ!?しかも貴族用の料理を平らげてる・・・食前の唱和すら始まって ないのに!!」 「ああ?何か悪かったかァ?こっちのルールはまだよく知らないもんでよォォ」 「このバカッ!周りを見なさいよ!誰一人食事をしてないのに待たなきゃ いけないってことがわからないの!?いやそれ以前にあんたの世界じゃ テーブルは殴り壊していいってルールでもあったわけ!?ええ!?」 物凄い剣幕である。しかも涙目。これにはギアッチョもちょっとだけ悪い事を した気分になった。 「そりゃあ悪かったな。ま・・・次からは気をつけるとするぜ」 しかしその余裕の態度が更にルイズの怒りを燃え上がらせる。 「・・・あんた 今から私の部屋を掃除してきなさい!それが終わったら 教室の掃除よ!授業が始まるまでにね!」 「ああ?」 「ご主人様には敬語を使いなさい!私が上!あんたは下よッ!!私の 事はルイズお嬢様と呼びなさい!そして常に私の後ろに控えていることッ! 良いわね!!」 そこまで言うと一瞬ギアッチョの眼が温度をなくしたように見えたが、ルイズ は負けじと睨み返した。 「・・・やれやれ 仕方ねえ・・・ 掃除をさせていただくぜェェ ルイズお嬢様 よォォー」 どうみても敬意はこもってなかったが、 「わ、解ればいいのよ!行きなさい!」 ルイズはとりあえず妥協することにした。なんだかんだでやっぱりギアッチョの 眼は怖かったようである。 前へ 戻る 次へ